工房内にはいくつか機械がありますが、
まずは この印刷所をつくるきっかけにもなった
プラテン小型活版印刷機「Adana-21J」の紹介をします。
タイポグラフィ関連の書籍を扱う出版社でもある朗文堂さんが
復刻版として製造・販売されている印刷機。
この「Adana-21J」は新たに国産として製造するために、
1970 年代初頭にイギリスから輸入されたAdana Eight-Fiveがモデルと
なっていて、ボディは渋いブリティッシュ・グリーン。
置いているだけでもかわいく、使うとなお楽しいです。
朗文堂の片塩さんと大石さんはほんとうにすごい方たちです。
このタイプの小型活版印刷機は、
日本に導入された当初(明治初期)は足踏み式だったことから
最初は「フート印刷機(foot press)」と呼ばれ、
それが手動となり現在では「手フート」または「手キン」と
呼ばれるようになったという変遷があるそうです。
おかしな呼び名ですよね。
昔のなごりを感じる業界用語っておもしろいです。
今ではいろんな印刷方法がありますが、
活版印刷は、なにより印刷の原点です。
それを誰にでも一番わかりやすい形で伝えられる印刷機として
置いておきたいという思いで購入に至りました。
2007年4月の発売と同時に勇み足で申し込んだので、
実はシリアルナンバーが「0001」という貴重な一台なんです。
これをいつか目に見えるところに展示して、たくさんの人に
印刷の原点、おもしろさを知ってもらいたいと思いながら、
会社の隅にひっそりと置かれたままになっていました。
それから早4年の年月が過ぎた2011年、
ようやくお披露目できる工房が完成したわけです。
活字を使って、アダナで印刷してみました。
デジタルデータではなかなか表現できない、なんともいえない書体が
素朴でやさしいです。